2012年4月28日土曜日

ナトリウムチャネルNav1.7と痛覚

Nature communicationより

Distinct Nav1.7-dependent pain sensations require different sets of sensory and sympathetic neurons. Nat Commun. 2012 PMID: 22531176
Nav1.7が痛覚の伝達に深く関与していることは痛覚異常症のヒトにおいてNav1.7の遺伝子に突然変異が生じていることからも明らか。しかしながら、Nav1.7KOマウスは致死的、Nav1.7-lox/Nav1.8-creマウス(Nav1.8陽性な一次知覚神経だけでNav1.7が欠失するようなトランスジェニック)では痛覚の異常は限定的と、動物実験レベルでのエビデンスは蓄積がなかった。今回は3種類のcreノックインマウスをNav1.7と交配させることで、Nav1.7が1)Nav1.8陽性な一次知覚神経、2)一次知覚神経のみ、3)一次知覚神経プラス自律神経で欠損するマウスを作成、行動解析を行った。1から3に向かうにつれより広範な末梢神経でNav1.7が欠失するのだが、その範囲に応じて痛覚の異常も進んでいく。ただし3者を比較しても明確な役割を提示できるほどのデーターとはなっていない。

2012年4月9日月曜日

マイクログリア活性化に必要な転写因子

Cell reportsより
IRF8 Is a Critical Transcription Factor for Transforming Microglia into a Reactive Phenotype. doi:10.1016/j.celrep.2012.02.014
IRF8という転写因子がマイクログリアの活性化に必須であるという論文。IRF8はマイクロアレイで引っかけてきています。
IRF8のノックダウン、dominant negativeなIRF8を使ったin vitroの実験でマイクログリア活性化につきものの遺伝子発現は減少してます。Nerve injuryモデルを使った行動解析でもIRF8ノックアウトで痛覚過敏は減弱するようです。
最初のマイクロアレイと、そこからの絞り込みからして大変だったのではないかと思います。津田先生おめでとうございました。

2012年4月5日木曜日

グリア細胞へのモルヒネの影響

Mol Painより
Acute morphine induces matrix metalloproteinase-9 up-regulation in primary sensory neurons to mask opioid-induced analgesia in mice. Mol Pain. 2012 PMID: 22444868.
Acute morphine activates satellite glial cells and up-regulates IL-1beta in dorsal root ganglia in mice via matrix metalloprotease-9. Mol Pain. 2012 PMID: 22439811.
オピオイド中断後にhyperalgesiaが生じるメカニズムについてDRGに注目して解析した研究2つ。オピオイドを投与するとDRGのグリア細胞においてGFAPとIL-1の発現が増加して、これは一次知覚神経におけるMMP9の上昇に由来する。グリアのIL-1が痛覚過敏を直接的に引き起こすが、これはMMP-9のシグナルを遮断することで予防できるとのこと。MORとMMP9との関係は不明。

2012年3月21日水曜日

抗うつ薬の鎮痛機序

Painより
An increase in spinal cord noradrenaline is a major contributor to the antihyperalgesic effect of antidepressants after peripheral nerve injury in the rat. Pain. 2012 PMID: 22424692.
慢性痛に効果のある抗うつ薬であるSSRI、SNRI、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤が脊髄モノアミン濃度に与える影響をマイクロダイアリシスで調べて、鎮痛効果を阻害剤でブロックして作用点を割り出しています。
SSRIは5HT>NE、SNRIはNE>>5HT、NRIはNEを増加させ、それぞれの効果は順番に、5HT阻害剤、5HT阻害剤+アドレナリンα2受容体阻害剤、アドレナリンα2受容体阻害剤でブロックされる。
SNRIであるミルナシプランでは5HTの上昇は一過性であるのに対してNEの上昇は大幅で持続的であることが目を引きました。

2012年2月12日日曜日

末梢神経に残る痛みの記憶

JNSより
Generation of a Pain Memory in the Primary Afferent Nociceptor Triggered by PKC{epsilon} Activation of CPEB. J Neurosci. 2012 PMID: 22323716.
LevineらのグループがNociceptor primingという現象を報告しています(まとめ)。今回の論文はNociceptor primingが起きるのに72時間かかること、PKCイプシロンとCREBの働きで知覚神経のタンパク合成が変化することに起因することを報告しています。Incision Painでも同様の現象があって、遷延性術後痛の一部はこのようなメカニズムで説明できるのではないかと思っています。

2012年1月22日日曜日

術後痛に対する補体系の関与

Painより
The complement component C5a receptor mediates pain and inflammation in a postsurgical pain model. Pain. 2011 PMID: 22137294.
補体系の活性化がtissue incisionの後に生じる炎症反応や疼痛に関与していることを示した論文。これまでもincision painとC5aの関係は報告(これこれ)があります。今回の論文の新規性はIL-1 betaとNGFの合成にC5a receptorが関与していて、補体系の関与のメカニズムが末梢性感作であることを示していることでしょうか。

2012年1月1日日曜日

TRPチャネルを抑制する内因性因子

J Neuroscienceより
Resolvin d2 is a potent endogenous inhibitor for transient receptor potential subtype v1/a1, inflammatory pain, and spinal cord synaptic plasticity in mice: distinct roles of resolvin d1, d2, and e1. J Neurosci. 2011 PMID: 22171045
TRPチャネルは痛覚の受容や脊髄後角のシナプス回路形成に働いていることは周知の事実でしょう。炎症を収束させるのに重要な脂質成分Resolvinが直接的にTRPA1とTRPV1を抑制させることを報告した論文です。Resolvinのサブタイプd1, d2, e1それぞれTRPV1/A1へのアフィニティが違っている。合計6種の組み合わせがどのような意義を持つのかは今回の解析では不明。Resolvinの作用は脊髄でも末梢でも認められる。
末梢神経の痛覚受容体が直接的に修飾され痛覚受容の大きさ自体が変容する・・・というストーリーに関心があるので紹介しました。