2009年12月23日水曜日

Bupivacaine Inhibits Glutamatergic Transmission in Spinal Dorsal Horn Neurons

Anesthesiology 2010; 112:138 – 43

臨床で使われる薬剤にはdirty drug(wiki)が多いとか言います。Dirty Drugというのは生体にいろんな作用点(受容体やイオンチャネルなど)を持っていて、単一の受容体だけではその作用機序を説明できないような薬剤のことです。

単一の受容体に着目し、その受容体に対する親和性と選択性を高めることによって予想外の副作用を抑えるというのが創薬の基本パターンだと思うのですが、最近はいろんな作用点を持った薬剤こそが臨床使用に耐えうるのではないか?というような見方をする人も増えているようです。

この論文は局所麻酔薬であるブピバカインがナトリウムチャネルではなくてNMDA受容体を阻害する機能を持っていることを脊髄レベルで報告したものです。

図1でブピバカインがexogenousに投与したNMDAによる内向き電流(NMDAカレント)を阻害することが示されいます。この作用は用量依存性があるようです。

図2ではTTXおよびLaCl3を同時投与することでTTX-rな電位依存型ナトリウムチャネルと電位依存型カルシウムチャネルの関与を見ています。TTXもLaCl3も単独ではNMDAカレントを阻害せず、ブピバカインと同時投与してもブピバカインの作用に影響を与えないことが示されています。

図3では異なるpH環境下でNMDA阻害作用がどう変化するかを検討しています。局所麻酔薬がナトリウムチャネルをブロックする場合、その作用はpHに依存しますが、NMDAカレントの場合は影響しないようです。メカニズムが違うのでしょうか。

図4ではGタンパク阻害剤GDP-beta-Sを投与してGタンパクの関与を調べていますが、この薬剤も影響を与えないようです。

図5ではブピバカイン以外の局所麻酔薬、リドカイン、ロピバカイン、メピバカインがNMDAカレントを阻害することが示されています。

そんなわけで、局所麻酔薬がほぼ間違いなく直接にNMDA電流をブロックすることが脊髄ニューロンで証明されました。NMDAを阻害するにはナトリウムチャネルよりもおよそ1000倍高濃度のブピバカインが必要なのだそうですが、それでも脊髄麻酔のときや硬膜外麻酔の時に除痛が得られている状態にはNMDAのブロッキング作用も関与しているようです。

ナトリウムチャネルのサブタイプ別の鎮痛薬の開発が注目されています。局所麻酔薬による強力な鎮痛作用に知覚神経選択性を付加することでさらに良質な薬剤を作るのがその狙いなのですが、臨床的な局所麻酔薬の使い心地をナトリウムチャネルの阻害作用だけに求めすぎると意外な落とし穴があるのかもしれません。

そんなわけでF先生K先生おめでとうございました。


2009年12月11日金曜日

Injury-induced mechanical hypersensitivity requires C-low threshold mechanoreceptors

Nature 462, 651-655 (3 December 2009)
グルタミン酸の小胞体トランスポーターの中で一番最近発見されたのがVGLUT3で、これまでは発現解析が中心に行われていたようです。このVGLUTがDRGの一部のニューロンに発現していて、どうやら特殊な役割、すなわち、組織損傷後のmechanical hypersensitivityに関与していることを報告した論文です。
Figure1でVGLUT3の発現解析を示しています。DHではL1&L2、DRGでは小型C-fiberニューロンに存在していて、その数はそれほど多くない模様です。全体の10%程度のようです。
Figure2はKOマウスの行動解析です。冷・熱刺激への反応は野生型と同等、機械刺激の閾値もフォルマリン刺激後の反応も同じですが、強い機械刺激への反応はKOマウスで減弱しているようです。脊髄WDRニューロンへの電気生理ではpinchに対する活動電位の発生数がKOで減弱しています
Figure3では炎症性疼痛・神経損傷・incision painそしてカプサイシン刺激後の熱と機械刺激に対する反応性をKOと野生型で比較しています。いずれのモデルでもmechanical hypersensitivityが減弱していることがわかります。
Figure4ではVGLUT3陽性DRGニューロンの電気生理的characterizeをしています。VGLUT3+ニューロンは弱い機械刺激と冷刺激に反応し、熱刺激への反応は乏しい特徴があるようです。このような特徴をもつニューロンはC-LTMR (low threshold mechanoreceptors)に分類されるようです。
機械的刺激による痛覚過敏は臨床的にも問題になることが多く、動物の行動解析でも強い反応がでますが、このような現象がDRGのわずか10%足らずのニューロンの活動性に帰結しうるということは驚きです。

2009年11月16日月曜日

Enduring Reversal of Neuropathic Pain by a Single Intrathecal Injection of Adenosine 2A Receptor Agonists

The Journal of Neuroscience, November 4, 2009, 29(44):14015-14025
アデノシンはATPの分解産物ですが、細胞外アデノシンは細胞間のシグナル伝達に用いられることもあり、その意味でATPと似ているのかもしれません。ただし、肺障害や敗血症モデルではアデノシンの抗炎症作用が証明されていて、アデノシン投与によって臓器障害が軽減したり、死亡率が減少したりする効果が認められていることから、ATPが炎症反応を増悪させることとは働きが逆になっています。
疼痛治療でも同じような現象が認められていて、脊髄に投与されたアデノシンに鎮痛作用があることは古くから知られていました。ATPが疼痛を引き起こすのとは逆の効果ですね。アデノシンはA1、A2という2種類の受容体を介して鎮痛作用を発揮すると考えられていて、おおざっぱに言えば術後痛などではA1受容体、神経因性疼痛ではA2受容体が主として関与していると考えられているようです。
今回の論文はアデノシンA2a受容体作動薬がCCIモデルラットの痛覚過敏をどのように抑制するか、そのメカニズムを解析した結果を紹介するものです。その鎮痛効果の一つの特徴として、A2a受容体作動薬を
髄腔内投与すると鎮痛効果が約4週間つづくことが示されています。この作用は、薬剤を痛覚過敏が完成した後の段階で投与しても認められることがわかります。A2a受容体作動薬の効果はオピオイド受容体拮抗薬では抑制されず、IL-10中和抗体によって抑制されること、A2a受容体作動薬を投与するとCCIラット髄液中のIL-10発現量が増加することから、抗炎症作用のあるIL-10の上昇作用が効果発現のメカニズムであろうと結論づけています。不思議なことにNaiveラットにA2a受容体作動薬を投与してもIL-10は上昇しないし、疼痛閾値の変化も認めません。神経損傷に関わる何かのイベントがないとアデノシンは働かないのでしょうか?神経損傷後の疼痛発生に果たすATPの役割やアデノシンがATPの分解産物であることなどを考え合わせると、生体内におけるアデノシンのふるまいが慢性痛や急性痛でどのように変化するのか知りたいところです。
アデノシンは臨床でも鎮痛効果がテストされていて、術後痛などでは一定の効果が認められているようです。
A2a受容体作動薬の長期間持続する鎮痛効果がヒトでも認められるなら、A2a受容体を利用した鎮痛薬が(たとえ髄腔内投与であっても)神経因性疼痛で効果を発揮する可能性は高いように思えます。

追記:査読がいくつか重なったため更新する時間がありませんでした。すいません。

2009年10月15日木曜日

Inhibitor B Kinase β Deficiency in Primary Nociceptive Neurons Increases TRP Channel Sensitivity

The Journal of Neuroscience, 2009, 29(41):12919-12929
サイトカイン刺激などに対する細胞内情報伝達シグナルとしてNFkbが重要であることは良く知られています。NFkbはIkbと結合して細胞質に存在しているけどなんらかの仕組みでIkbとの結合が外れることによって核内への移行して機能を発揮すると言われています。IkbはIkbkinaseによってリン酸化されると分解されてしまう性質があり、Ikb kinase (IKK)はIkbの分解を介してNFkbを活性化しているということになります(参考)。
この論文は、IKKの中の一つIKKbetaを一次知覚神経の中の痛覚伝達神経だけ(SNS-Creシステム)でコンディショナルノックアウトしたマウスの機能解析を報告しているものです。
Fig1でIKKbetaの発現をチェックしていますが、ノックアウトでは発現が低下しています。面白いことに、NFkBの活性はノックアウトしても変化しないようです。ニューロン以外の細胞にもNFkBの発現があるのでマスクされてしまうんでしょうか?
行動解析(fig2)では機械刺激・熱刺激に対する反応潜時がノックアウトで短縮していて、IKKbetaが何らかの形で知覚神経を抑制する方向に働いていることが示唆されます。カプサイシン刺激による痛覚過敏もノックアウトでは亢進しています。カルシウムイメージング(fig5)ではカプサイシン、ATP、UTP、カリウムによる細胞内カルシウムの増加がアッセイされています。カプサイシン刺激によるカルシウム増加だけはノックアウトで増加しています。DRGの小型・中型ニューロンにおけるカプサイシンへの反応性ですが、ノックアウトでは8割ぐらいのニューロンがカプサイシン反応性ありです・・・すごく多い印象です。
DRGにおけるTRPV1発現量はmRNAレベルで若干増加、免疫染色によるTRPV1陽性細胞数は総数は変化しないけど、強染性のニューロンは増加するようです。坐骨神経や脊髄後角では、細胞膜分画のTRPV1発現量が増加するようで、総体としてアクティブなTRPV1が増量していることが示唆されます。
ということで、IKKbetaはTRPV1を何らかの機序で抑制していると結論しています。これがNFkBを介するのか、あるいはIKKbetaがTRPV1に直接作用するのかは今のところは不明です。最初のフィギュアのNFkBアッセイはグリアの影響を除いて、ニューロンだけでアッセイしたらもっとはっきりするのではないかと思うのですが。

2009年9月24日木曜日

Large A-fiber activity is required for microglial proliferation and p38 MAPK activation in the spinal cord

Molecular Pain 2009, 5:53
"different effects of resiniferatoxin and bupivacaine on spinal microglial changes after spared nerve injury"という副題がついています。
SNIモデルはNeruopathic painのモデルの一つで、最近では遷延性術後痛モデルとも見なされるようになっています。この論文は神経ブロック(=神経活動を局所麻酔薬などで止めること)とくにC-fiberのみの神経ブロックが脊髄マイクログリアの活性化を予防できるかどうかを調べたものです。
C-fiberを選択的にブロックする手法として、神経へのRTX注入を行っています。RTXは強力なTRPV1アゴニストで短期的には脱感作によるTRPV1の機能低下、長期的にはTRPV1の発現低下あるいはC-fiber neuronの変性をきたします。今回の投与方法(0.01%溶液神経内注入)では数日間のheat/mechanical hypoalgesiaが生じるようです。これを根拠に著者らはRTX投与群を「選択的C-fiber neuronブロック群」と定義しています。
もう一方の実験群として、局所麻酔薬ブピバカインによるブロックを行っています。ブピバカイン群とRTX群の違いの一つとして、RTX群ではmotor functionが温存されていることが特徴的でしょうか。SNI施行後の疼痛反応の違いとしては、ブピバカイン群ではmechanical allodyniaが消失していますが、RTX群ではブロックしないグループと同程度の痛覚過敏が出現しています。
脊髄のp38活性化の状態を見ると、RTX群ではリン酸化p38の発現量は抑制されませんが、ブピバカイン群ではリン酸化p38陽性細胞数が有意に抑制されることがわかりました。
著者らはRTXによるブロックはC-fiber選択的なブロックで、ブピバカインはA/C両者をブロックしていると考えていて、実験結果から脊髄p38の活性化にはA-fiberの活動性の亢進が必要であると結論づけています。
SNIを遷延性術後疼痛の一つのモデルとみなして臨床的意義を考えるならば、遷延性術後痛を予防するためには、C-fiberのブロックだけでは不十分で、A-fiberも含めた十分なブロックを行う必要があるという結論になるのでしょうか。
急性術後疼痛のモデルであるincision painモデルでも脊髄p38の活性化が生じることは前回ご紹介したとおりです。しかもincision painの場合、p38阻害剤を髄腔内投与しても疼痛は減弱しません。そんなわけで、脊髄におけるp38のリン酸化は遷延性疼痛の際によく見られる現象だが、慢性疼痛の本態ではないのではないか?という疑問というか疑念を念頭に入れておく必要はありそうです。もっと長期的な行動解析のフォローアップを見てみたいと思いました。

2009年9月7日月曜日

Spinal Microglial Expression and Mechanical Hypersensitivity in a Postoperative Pain Model

Anesthesiology 2009 111 640-648
脊髄におけるマイクログリアの活性化が末梢神経損傷モデルの疼痛発症に関与する、というか、すごく重要である、ということは非常に有名です。最近では末梢神経損傷モデルだけではなくて、例えば骨ガン転移モデルでも脊髄グリア細胞の活性化が報告され、脊髄におけるグリア細胞の活性化は慢性疼痛に共通した現象あるいは根本的な原因なのではないか?という仮説がいろいろなモデルで検証されています。
そのような状況でこの論文は術後痛モデルにおけるマイクログリアの活性化、特にマイクログリアにおけるp38MAPKのリン酸化とincision painの関係について報告しています。
incisionモデルを作成して脊髄のOX42とp-p38の免疫染色をしています。SNTという神経損傷モデルと同様、OX42陽性細胞とp-p38陽性細胞が増加しています。マイクログリアの活性化を抑制するミノサイクリンをincision painモデルの動物に投与すると、OX42陽性細胞の増加は抑制されますが、痛覚過敏は減弱しません。同じ用量のミノサイクリンはSNTには効果があります。p38抑制剤SB203580についても、SNTで効果のあった用量をincision painに投与しても痛覚過敏は抑制されませんでした。
ちなみに別種のp38阻害剤をincision painモデルに前投与した研究ではmechanical allodyniaの発症は抑制されるようです。阻害剤の種類や投与のタイミングなども結果に関係するのでしょうか。

2009年8月22日土曜日

Reduction of bone cancer pain by activation of spinal cannabinoid receptor 1 and its expression in the superficial dorsal horn of the spinal cord in

Anesthesiology. 2009 Jul;111(1):173-86.
カンナビノイドはオピオイドと比較されることが多いです。その際よく聞くのは慢性疼痛モデルではMORの発現は低下するけれどCB1の発現は低下しないので、慢性痛に対してはオピオイドよりもカンナビノイドがより効果的なのではないか、という可能性を提示するものです。
この論文はこの可能性を骨がん転移モデルで検証したものです。脊髄におけるCB1の発現を免疫染色で確認しています。脊髄CB1の発現には諸説あることは以前述べた通りですが、この論文ではCB1は軸索側ではなくて樹状突起側にだけあるので、おそらくは脊髄内のinterneuronに発現しているのだろうと結論しています。行動解析では脊髄内に投与したCB1アゴニストは骨がん転移に伴う疼痛を緩和しており、ここでは脊髄CB1は鎮痛の方向に働いていることがわかります。面白いことに骨がん転移モデルでは脊髄MORの発現は低下するけれど、CB1の発現は変化していません。そんなわけで、この論文は癌性疼痛のなかでも難治性と言われる骨がん転移にCB1の投与が奏功する可能性を提示しています。


2009年10月5日
追記です。CB-1は樹状突起ではなくて軸索に発現してます。指摘頂いたので訂正します。

Membrane-delimited coupling of TRPV1 and mGluR5 on presynaptic terminals of nociceptive neurons

J neurosci 2009 29(32) 10000-10009
カプサイシン受容体TRPV1はDRGから末梢組織に輸送され、皮膚に加わる熱刺激などを痛覚として受容する働きがあります。
一方、脊髄でTRPV1の免疫染色を行うとTRPV1陽性な終末が後角を中心に認められ、TRPV1が脊髄にも運搬されていることがわかります。TRPV1を興奮させる刺激、すなわち42度以上の熱、低いpHあるいはカプサイシンが脊髄に存在するとは考えにくく、脊髄後角のTRPV1のfunctionは長く不明のままでした。
この論文は脊髄のTRPV1がGタンパク共益型のグルタミン酸受容体mGluR5の興奮により合成されるdiacylglycerolという脂質によって活性化され、後角ニューロンのEPSCを増加させることを報告しています。mGluR5作動薬DHPGを髄腔内投与すると一過性の痛覚過敏が生じますが、TRPV1ノックアウトマウスでは痛覚過敏の発現が弱いことが示されています。電気生理ではDHPGはEPSCの頻度を増加させますが、これはTRPV1阻害剤でブロックされます。培養DRGニューロンにDHPGを投与すると一過性の細胞内カルシウム濃度上昇が認められ、TRPV1阻害剤でブロックされています。OAGという、細胞膜を透過しやすいDAGアナログでも同様の現象が確認されています。
mGluR5がEPSCを増加させることは以前から知られていましたが、どのように脊髄後角ニューロンを興奮させるかということは、これまで知られていませんでした。この論文はmGluR5の下流にはTRPV1があって、脊髄後角において興奮性に働く可能性があることを示しています。
mGluR5はEPSCだけでなく、IPSCも増加させる作用があるそうです。今回紹介した論文はその一方だけを取り出して調べているわけで、後角ニューロンに対するmGluR5の作用は相反的であるということは念頭に置いておく必要はありそうです。慢性疼痛の発症にmGluR5-TRPV1の系がどのように関与するのか、さらに検討していく必要があるのでしょう。

2009年8月15日土曜日

日本麻酔科学会第56回学術集会

今週の日曜日から日本麻酔科学会です。新型インフルエンザの影響で、当初予定された日程からこの時期に延期となりました。
僕は2日目、月曜日に発表を予定しています。知覚神経のナトリウムチャネルについて60分弱の枠でお話しします。ナトリウムチャネルは局所麻酔薬のターゲットですから、麻酔科医はナトリウムチャネルを利用して仕事をしていると言ってもよいかと思います。最近10年間で明らかにされたナトリウムチャネルサブユニットの多様性とその意義、そしてサブユニットの多様性を利用した選択的ナトリウムチャネル阻害剤による鎮痛剤開発の現状について報告します。
同じ時間帯には横綱級?な先生方のご講演が目白押しですので、ひそかに盛り上がったらいいなぁと思います。

2009年8月11日火曜日

Spinal endocannabinoids and CB1 receptors mediate C-fiber-induced heterosynaptic pain sensitization.

Science. 2009 Aug 7;325(5941):760-4
マリファナなどカンナビノイドに鎮痛作用があるのはよく知られていますが、不思議なことに通常のCB1ノックアウトマウスは痛みに低感受性です。末梢神経のCB1だけをノックアウトしたマウスは反対に痛みに対する感受性が亢進するので、中枢神経のどこかの部位でカンナビノイド-CB1のシステムが痛み受容を促進する働きを持っているのだろうと考えていました。CB1受容体はシナプス前に存在し、シナプス後側からreleaseされる内因性カンナビノイド2AGによって、そのシナプスを抑制する・・というのが脳内における内因性カンナビノイドの一般的な働きです。ということは、CB1受容体と2AGが存在するシナプスが興奮性シナプスならばCB1が活性化すると疼痛は減弱し、逆に抑制性シナプスにCB1が存在すればCB1の活性化は「抑制ニューロンの抑制」によって疼痛を惹起する方向に働くことになります。
それでこの論文ですが、脊髄後角におけるCB1の局在を電子顕微鏡を使って調べています。VIAATというマーカーを使った二重染色で、CB1は抑制性シナプスのシナプス前に存在することが確認されています。後角ニューロンへのパッチクランプでは、CB1アゴニストがグリシン、GABA作動性のIPSCを抑制させることが示されています。これらの所見は、脊髄後角のカンナビノイドシステムには「抑制ニューロンの抑制」を生じさせるしくみがそなわっていることを示しています。
実際にこのシステムが働くかどうかについては行動解析で検討しています。カプサイシンを足底に投与するとC線維を強力に刺激することでcentral sensitizationが生じますが、CB1アンタゴニストを髄腔内に投与するとcentral sensitizationによる痛覚過敏は減弱します。同様の結果はCB1ノックアウトマウスでも認められ、さらには、脊髄後角抑制性介在ニューロンのCB1を欠失させたコンディショナルノックアウトでも認められました。そんなわけで、Activity dependentなCentral sensitizationの形成に脊髄のカンナビノイドシステムが関与していることが示されました。
central sensitization, disinhibitionとカンナビノイドの関係、脊髄レベルでは鎮痛ではなく疼痛惹起に働く可能性などとても興味深い内容です。

ところで、脊髄のカンナビノイドといえば、つい先日このような論文もでています。
同じ脊髄後角で、CB1と2AG合成酵素DGLの局在を調べています。不思議なことに、こちらの論文は一次知覚神経終末にCB1、二次ニューロンにDGLが存在するケースが多くて、抑制性の介在ニューロンにはあまり存在しないと報じています。上記論文とは全く逆の結果で、もっと不思議なことには行動解析の結果も反対、すわなちCB1アンタゴニストがストレスによる鎮痛作用を抑制するという結果を提示しています。一次知覚神経にCB1が発現することは僕も確認していますが、脊髄のCB1は一次知覚神経由来ではない、というのが最近の定説で、僕自身も末梢神経のCB1は末梢組織で働くと思っています。なのでこの論文の結果には素直にうなずけない面があります。
蛇足ですがこの論文のsubmitの日付とacceptの日付を見るとちょっとびっくりします。上記論文がpublishされたタイミングとの関係はどうなんでしょうかね。

仮に両方の神経終末にCB1が存在したとすると、脊髄にCB1アゴニスト・アンタゴニストを投与するという選択はカンナビノイドの選択的投与戦略としてはぱっとしない、ということになります。やはりカンナビノイドは、CB1アゴニストを末梢に投与する、というのがもっとも有効に思えます。

2009年7月26日日曜日

Epigenetic modulation of mGlu2 receptors by histone deacetylase inhibitors in the treatment of inflammatory pain.

Mol Pharmacology 2009 75(5)
ヒストンはDNAを巻き付けておくためのタンパクですが、これがアセチル化したり、メチル化したりすることでヒストン-DNA結合の強さが変化して、その結果DNAからの転写が促進されたり、抑制されたりする・・というのがエピジェネティックな遺伝子発現調節といわれるものです。中でもヒストンのアセチル化・脱アセチル化はもっとも広く研究されていて、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤は抗ガン剤として製剤化されています。
この論文はHDAC阻害剤に痛覚過敏抑制効果があることを報告したものです。2種類のHDAC阻害剤、MS-275とSAHAを5日間反復投与すると、ホルマリン足底注入後のhyperalgesiaが2nd phase中心に抑制されるようです。この効果は薬剤の単回投与では抑制されません。HDAC1&HDAC2がDRGとDHに存在することがウェスタンと免疫染色で示されています。著者らはHDAC阻害剤がDRG&DHのHDACに効いていると考えているようです。HDAC阻害剤の鎮痛効果がGluR2/3阻害剤LY341495によって抑制されるので、その効果はGluR2/3のシグナリングを介している、ようです。確かに、DRG/DHにおけるGluR2の発現量はHDAC阻害剤で増加しています。HDACはヒストンを脱アセチル化して遺伝子の発現を誘導する・・ということは、HDAC阻害剤はヒストンの脱アセチル化を抑制するので遺伝子発現は減少する・・・ような気がするのですが、ここでは逆になっています。そのメカニズムですが、著者らはNFkBのアセチル化に注目しています。すなわち、HDAC阻害剤の投与によりNFkBのアセチル化が進んでmGluR2の転写が活性化されるのではないかと考えているようです。
HDACの役割として、ヒストンとNFkB、どちらのアセチル化が主体なのかよくわかりません。少なくとも僕はヒストンを介する作用しか知りませんでしたが、組織や細胞によってさまざまなのでしょうか。HDAC阻害剤に鎮痛作用があることを報告したということについては評価してよいと思いますが、個人的にはヒストンのアセチル化の程度がどうなっているのか調べて欲しかったです。

2009年7月10日金曜日

Differential contribution of SNARE-dependent exocytosis to inflammatory potentiation of TRPV1 in nociceptors.

FASEB J. 2009 Jul 7. [Epub ahead of print]
炎症性疼痛、とくに熱に対する痛覚過敏にTRPV1の活性化が関与していることは広く知られた事実です。それで、プロスタグランディンやブラジキニンがどうやってTRPV1を活性化させるか?ということについては、細胞内のPKCやPKAが関与しているというような話題に始まり、現在ではTRPV1の細胞内分布の変化「TRPV1は普段は細胞質に分布しているけど、活性化されると細胞膜に発現する」という現象に注目が集まっています。
この論文はこれまでTRPV1を活性化させると言われてきた様々な物質:NGF, IGF-I, ATP, BK, IL-1, arteminをDRG細胞に作用させたときにTRPV1の細胞内発現がどう変わるかを調べています。NGF、IGF-1、ATPを用いるとTRPV1の膜表面への発現が増加しますが、BK、IL-1、arteminでは変化しません。カルシウムイメージングでみると、これらすべての物質がTRPV1を活性化させますが、TRPV1を膜表面に発現させる役割を持つSNAREタンパクの阻害剤が有効なのはNGF、IGF-1、ATPによる活性化の場合だけであることがわかりました。
注目するべきはボツリヌストキシンA(ボトックス)との関係でしょうか。ボツリヌストキシンは痙性斜頸とか顔面痙攣など筋肉への作用が期待されて臨床応用が始まりましたが、頭痛などへの応用も考えらているようです。
いったいどうしてボツリヌストキシンが痛みに効くのか?というところですが、ボツリヌストキシンはSNAREタンパクを強力に阻害する作用があり、SNAREを利用して細胞内小胞体からシナプスへとアセチルコリンを放出する機構をブロックすることで筋弛緩作用が生まれる、ようです(参考)。ボツリヌストキシンがカプサイシンによる神経感作をブロックするというヒトのデーターもあって、臨床的にも両者の関係は注目されているのですが、膜タンパクであるイオンチャネルTRPV1と神経伝達物質アセチルコリンが同じシステムで細胞内移動を行っていて、ボツリヌストキシンの鎮痛作用にこんな作用機序があるというのは興味深いです。
この論文によると、TRPV1感作物質にはSNARE dependentのものとSNARE independentなものの二つがあるということになります。炎症部位にはTRPV1感作物質がごちゃまぜに、大量に存在するのでしょうから、臨床的にボツリヌストキシンで100%TRPV1の感作をブロックするというのはなかなか難しい話だ、ということでしょうか。

2009年7月2日木曜日

Experimental arthritis causes tumor necrosis factor-α-dependent infiltration of macrophages into rat dorsal root ganglia

Experimental arthritis causes tumor necrosis factor-α-dependent infiltration of macrophages into rat dorsal root ganglia which correlates with pain-related behavior→題名が長すぎてタイトルからはみ出したので。
Pain in press
脊髄のマイクログリアが活性化することで痛覚過敏が発症する、というメカニズムは今やとっても有名です。同じような現象がDRGで、しかも神経損傷のない慢性関節炎モデルでも起きている、というのがこの論文の趣旨です。
マクロファージ(DRGの場合はマイクログリアではなくてマクロファージなんですかね?)のマーカーにED1抗体を使っていて、CFA全身投与後の関節炎モデルDRGを染めています。確かにED1陽性な小型細胞が染まっています。ED1陽性細胞の増加は神経損傷モデルでも認められるらしいのですが、我々がOX42で検討した時は明確なシグナルはありませんでした。ED1とOX42では認識する細胞が若干違うのでしょうか?
この論文ではTNF-alphaの阻害剤を投与していて、疼痛の減弱とともにED1の発現が抑制されています。目を引いたのは、DRGの中の血管に注目してVCAM-1の発現を検討しているところです。炎症を起こした関節支配領域のDRGだけでVCAM-1の発現が増加していて、その分布はDRGの血管に一致しています。血管内皮でVCAM-1が活性化して、それがマクロファージ浸潤の引き金になるというメカニズムを想定しているようです。脊髄のマイクログリアの場合、血管からやってくる説のグループと神経組織から移動するだけ説のグループとの間で結論はでていない?ような気がしていましたが、不勉強で詳細は知りません。DRGの場合はさらに末梢ですから、血管からやってくる、ということでよいようにも思えます。この論文だけでは根拠として弱いですけど。

2009年6月19日金曜日

Local Translation in Primary Afferent Fibers Regulates Nociception

Plos one 2008, 3, (4) e1961
mTORというのはmammalian target of rapamycinの略で、mRNAからタンパクが作られる過程、いわゆるtranslationを制御する物質なのだそうです。
タンパク合成というのは細胞体で行われるもの、というのが一般的理解ですが、実はそうでもない、というケースも数多く報告されています。神経細胞でいうならばシナプス近傍でもタンパク合成が行われていて、そのようなタンパク合成が神経の活動性、代表的には海馬におけるLTPですが、そういったものに影響を与えているということはまずまず知られています。細胞体以外でのタンパク合成に重要なのがmTORで、この論文は一次知覚神経、それもシナプス側ではなくて、皮膚組織側にmTORが発現していて、痛覚過敏に何らかの貢献をしている、という論文です。
末梢神経にmTORが存在していることを皮膚組織の免疫染色で示しています・・・とても綺麗です。神経のマーカーにはPGPとNF200を使っていますが、多くのmTOR陽性線維はNF200陽性、すなわち有髄繊維であるようです。
mTORはラパマイシンという抗生物質で機能が阻害されるからmTORという名前なのですが、実際にラパマイシンを足底に投与して、痛覚過敏が減弱するかを検証しています。結果として、カプサイシン投与後のsecondery hyperalgesiaを抑制して機械刺激に対する過敏性を減弱させるようです。この反応は、中枢性感作(脊髄レベルの可塑性)によって生じると考えられていたのですが、一次知覚神経の、それもDRGよりももっと末梢側におけるタンパク発現の変化が病態に関与していると示されたことには驚きました。

2009年6月6日土曜日

Distinct subsets of unmyelinated primary sensory fibers mediate behavioral responses to noxious thermal and mechanical stimuli

PNAS 2009 Jun 2;106(22):9075-9080.
C-fiber neuronがIB4の発現の有無で二つのグループに分かれるのは周知のことと思います。マウスではIB4に分布がきわめて近いMrgprdというタンパクがあって、AndersonのグループはMrgprdトランスジェニックマウスを使って、投射先である皮膚組織の領域(深さ)がMrgprd+とMrgprd-で異なることなどを示してきました。ちなみに、マウスではTRPV1陽性ニューロンはほとんどすべてIB4-なニューロンと重なるので、マウスC-fiberはMrgprd+かTRPV1+かに分けることができるわけです。この論文はMrgprd遺伝子の前にジフテリア毒素受容体遺伝子をくっつけたマウスを作り、これにジフテリア毒素を投与することでMrgprd+ニューロンを選択的に除去したときに痛覚受容がどうなるかを見たものです。ジフテリア毒素を投与されたマウスではIB4の発現がほぼ消失しています。この条件下で熱と機械刺激に対する反応を見てみると、熱刺激への反応は正常なのに、機械刺激に対する閾値は著しく上昇します。逆に、カプサイシンでTRPV1+すわなちMrgprd-ニューロンを除去すると全く逆の反応、つまり、機械刺激には正常に反応し、熱刺激への感受性が失われることがわかりました。
このような行動解析の結果は、電気生理学的にはpolymodal、すなわち、いろんな刺激に反応するC-fiberニューロンが、実は機械刺激を伝達するグループと熱刺激を伝達するグループの二つに分けることができうる、ということを示します・・・。
ところで、同じような手法でNav1.8陽性ニューロンを除去したらどうなるのか?ということを調べた論文があります。マウスNav1.8はmRNAレベルではC-fiber neuronの大部分に発現しているので、このトランスジェニックマウスでは、すべてのIB4+ニューロンと(おそらくは)ほとんどすべてのTRPV1+ニューロンが消失します。当然、熱刺激への感受性も機械刺激への感受性も低下すると思いきや、行動解析の結果では、両者とも野生型とほとんどかわりはありません・・。
いったいどうなっているのでしょうか?
追記:Nav1.8アブレーションマウスでは、von Freyの値は野生型とトランスジェニックでほぼ同じですが、より強い機械的刺激に対する反応はアブレーションマウスで減弱しているようです。

2009年5月29日金曜日

Prediction of chronic post-operative pain: pre-operative DNIC testing identifies patients at risk

Pain. 2008 Aug 15;138(1):22-8. Epub 2008 Jan 8

手術術後の継続した痛み(persistent postoperative pain: PPOP)を訴える患者は意外に多く、その一部は神経因性疼痛の要素を含んでいるようです。
原因はいろいろと言われていて、手術操作に伴う神経損傷などが注目されています。確かに肋間神経にダメージを与えやすい開胸手術でPPOPの発症率は高いです。しかしながら、PPOP患者のすべてが神経損傷のエピソードを持つわけではなく、複数の因子が作用してPPOP発症に至るというのが現時点での理解なのでしょう。
どのような因子が関与しているのか?という疑問に対し、この論文はdiffuse noxous inhibitory control (DNIC)に注目してその関与を検討しています。
DNICとは「痛み刺激を与えると別の部位の痛みが和らぐ」というもので、内因性の鎮痛機構が働くことによる現象であると説明されています。具体的にこの論文では右手に熱刺激を加えて痛み評価を行い、左手を熱いお湯(46度)につけたときとつけないときで痛みの強さが異なるかをテストしています・・・実際異なるみたいです。
それでDNICの程度や術後急性期痛の程度、痛みの閾値、手術術式、麻薬の使用量などの項目ごとにPPOPの発症頻度を調べて、どの因子がPPOP発症に強く関与するのかを調べたわけです。
結果としてPPOPとの関連が証明されたのは「DNICの強さ」と「急性痛の強さ」だけでした。
ちなみに、DNICの弱い人は一見急性痛が強いように思えるので、「DNIC弱い→急性痛強い→PPOP発症」という図式が頭に浮かびがちなのですが、この論文も含め、DNICと急性痛との関連は低いという報告が多くなされています。急性痛の強さも独立したPPOPの危険因子なのでしょう。
内因性の鎮痛機構が弱い人に対して、周術期にどのような介入ができるのか?というのはよくわかりません。もう一つの因子、強い急性痛をintensiveに治療することがPPOP発症を抑制するのか?というのもはっきりしません。少なくとも現行の周術期鎮痛薬・・麻薬や硬膜外麻酔ですが・・でPPOPの予防に成功した、という臨床論文はない、はずです。
慢性痛の治療が難しい一つの理由は「できあがった疼痛の治療は難しい」というもので、「だから慢性痛は予防が肝心」というフレーズと対をなしているわけです。PPOPはその起点があきらか(=手術)ですから、その意味で「もっとも簡単に予防できそうな慢性痛」のはずなのですが。

2009年5月19日火曜日

Effect of plantar local anesthetic injection on dorsal horn neuron activity and pain behaviors caused by incision.

Pain. 2002 May;97(1-2):151-61.

「手術に先だって十分な鎮痛を施すと、術後鎮痛に必要な鎮痛剤の量が減少する」これがいわゆるpre-emptive analgesiaのコンセプトです。このコンセプトは炎症性疼痛モデルでみられる脊髄レベルの神経の興奮性の変化-central sensitization-が手術術後にも生じるので、これを予防すれば術後痛が軽減できるだろうというものです。
pre-emptive analgesiaはわかりやすいし、比較的実行しやすいということでずいぶん流行したように思うのですが、その効果を証明する臨床研究はありません
この論文はBrennanの術後痛モデルを用いて、脊髄後角のwide dynamic range(WDR)ニューロンが発火する様子を観察し、ニューロンの発火に局所麻酔薬の投与がどう影響するかを調べたものです。著者らはbackground activityの強さとreceptice field(あるニューロンが強い刺激を受容するその領域)の広がりでWDRニューロンの興奮を評価しました。術後痛モデルはWDRの興奮を強め、末梢に投与した局所麻酔薬はWDRニューロンの興奮を抑制します。この効果は局所麻酔薬を処置前に投与しても処置後に投与しても同様でした。この結果は、術後痛モデルにおいては、脊髄ニューロンの過興奮に一次知覚神経の過剰な刺激が必須であることをしめすもので、脊髄ニューロンが、それ自体を起点として過興奮状態となる、central sensitizationが術後痛モデルにはあまり関与しないことをしめすものです。
このような論文と対になるように、central sensitizationではkeyとなるNMDA受容体拮抗薬がBrennanのモデルでは効果的でないことを示す論文が発表されるようになっています。ちなみに、ケタミンはNMDA受容体拮抗薬です。
術後痛を考えるときは、もっと一次知覚神経に注目するべきでなのでしょう。

2009年5月14日木曜日

General anesthetics activate a nociceptive ion channel to enhance pain and inflammation

Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 June 24; 105(25): 8784–8789.
揮発性麻酔薬には気道過敏性があったり、静脈麻酔薬プロポフォールには血管痛があったりして麻酔科医は困っているのですが、これらの作用が薬剤が一次知覚神経に作用するものであること、そのメカニズムとしてTRPチャンネルの一つTRPA1を介するものであることを示した論文です。2.9MACのイソフルランによってTRPA1を介して電流が流れていることがわかります。2.9MACはちょっと高濃度ですが、培養DRGニューロンでも同じような電流が記録されています。TRPA1ノックアウトマウスにプロポフォールを投与して脳波を測定すると、野生型でみられた注入時の脳波変化が認められないので、プロポフォールもTRPA1を活性化させて注入時の血管痛をおこすのではないかと著者らは考えているようです。この論文ではイソフルランとTRPA1との関係に焦点を当てていますが、実はTRPV1もイソフルランによって影響を受ける、すわなちイソフルラン投与環境ではカプサイシンやプロトン、熱に対する反応性が増強する効果があることを示した論文を同じグループが発表しています。こちらの論文はイソフルランの濃度を振って用量依存性も示しています。1MACあたりから効果がでるようです。
揮発性麻酔薬や静脈麻酔薬に鎮静効果があっても鎮痛効果がないことは麻酔科医であれば誰でも知っていることだと思いますが、これらの論文の結果を考えると、全身麻酔薬は「眠くなるけど実は普段よりも痛い」状態を作り出しているのかもしれません。それから、全身麻酔中には体温は必ず下がりますが、TRPV1アゴニストのカプサイシンでも体温は下がります。そう考えると、「イソフルランはTRPV1の作用を増強して麻酔中の体温を低下させるのだ」という作業仮説が成り立ったりして興味深いです。
ちなみにTRPA1は催涙ガスやワサビ、ホルマリンによって開口します。ワサビのあのツンとくる感じでTRPA1の作用を実感したらよいのでしょうか。

2009年10月5日
訂正です。プロポフォール投与時に測定しているのは脳波ではなくて筋電図のようです。

2009年5月6日水曜日

A-803467, a potent and selective Nav1.8 sodium channel blocker, attenuates neuropathic and inflammatory pain in the rat

PNAS 2007 May 15;104(20):8520-5
Nav1.8はナトリウムチャンネルαサブユニットの一つで知覚神経に選択的に発現しているとされる。ノックアウトマウスの解析により、Nav1.8が痛覚過敏に貢献していることが明らかにされ、Nav1.8の阻害剤を新規鎮痛薬として開発しようという動きがあるわけです。
すでに幾つかの製薬会社が開発に成功しているのですが、その中で論文発表にいたったものを今回は紹介します。
合成された試薬A-803467はNav1.8に対する親和性が他のサブユニットに対して約1000倍高いため、Nav1.8の働きを止めるような量のA-803467を全身投与しても、その他のナトリウムチャンネルには影響を与えることがないようです。
行動解析の結果から、A-803467の全身投与には急性痛(機械刺激)だけでなく炎症性疼痛、神経因性疼痛などのモデルによる疼痛の緩和に効果があるようです。
Nav1.8の機能解析については、まずノックアウトマウスのデーターが公開されて、そのあとオリゴDNAによるノックダウンの論文が続く格好になったのですが、一部慢性痛モデル(神経因性疼痛モデルですけど)に関して、「ノックアウトでは痛覚過敏を抑制しないのにノックダウンでは抑制される」という異なった結果が得られています。
一説にはNav1.8ノックアウトマウスではNav1.7が補完的に増加していて、そのせいで本来のNav1.8の機能が欠損しなかったのではないか、などとと言われているようです。それ以前の問題として、ラット(ノックダウン)とマウス(ノックアウト)で痛覚のプロセシングがずいぶん違う可能性もあるのですが・・・。いずれにしても、この阻害剤の行動解析の結果はノックダウンのデーターに近いと言って差し支えないのでしょう。

2009年4月28日火曜日

Loss-of-function mutations in the Nav1.7 gene underlie congenital indifference to pain in multiple human populations

Clin Genet 2007: 71: 311–319
来月に学会発表の予定があり、その準備と知識の整理をかねて「知覚神経特異的Naチャンネルの機能解析と創薬」といった観点で論文を紹介したいと思います。
Naチャンネルにはαとβの二つのサブユニットがありますが、αサブユニットにNa通過部位や電位感知部位が集まっています。もちろん、局所麻酔薬もαサブユニットの一部にくっつく形で作用が発現します。
このαサブユニットですが、現在では9種類が発見されていて、Nav1.1-Nav1.9と整理されています。
この中でNav1.8とNav1.9は「知覚神経特異的」すわなち、一次知覚神経にだけ存在するNaチャンネルであるとされていて、僕はこれらの解析を行っていたわけです。
ところで、一次知覚神経にはNav1.7というチャンネルも存在していて、活動電位の発生に対してはNav1.8や1.9よりもNav1.7の方が貢献度が高いと考えられています。しかしながら、Nav1.7のノックアウトマウスはlethalであり、少なくともマウスやラットでは中枢神経や平滑筋にも発現が認められているので、「Nav1.7は知覚神経の機能発現に重要だけど知覚神経特異的ではない」というのが僕の中での整理でした。
それでこの論文です。ヒトにはCongenital indifference to pain (CIP)と呼ばれる遺伝性疾患があるのですが、CIPを発症する血族の遺伝子解析をしたところ、地域の異なる9血族でNav1.7をコードする遺伝子が異常が見つかったという報告です。遺伝子異常の詳細はさまざまですが、いずれもNav1.7がその一部しか合成されなくなることが予想されています。
要するに「ヒト版Nav1.7ノックアウト」なのですが、ここで明らかになったことは「ヒトでNav1.7をノックアウトすると痛覚が消失するが、それ以外に明らかな異常はなさそう」ということで、これはNav1.7ノックアウトマウスがlethalであることを考えるととても不思議です。
そのことに一定の回答を出した論文が
"A stop codon mutation in SCN9A causes lack of pain sensation"
彼らはヒトとマウスの中枢神経におけるNav1.7の発現をin situ hybridizationによって可視化したのですが、マウスでは視床下部や下垂体などにもNav1.7が発現しているけどヒトでは認められない(発現が少ない)ということがわかりました。in situ hybridizationだけで定量的な議論をするのはどうかな?と思いますが、まぁ納得できる結果ではあります。
そんなわけで、Nav1.7もヒトに限っては知覚神経特異的と言ってもよいのかもしれません。
関連する文献として
An SCN9A channelopathy causes congenital inability to experience pain
パキスタンのCIP3家族でNav1.7に異常。こちらはアミノ酸が一つ入れ替わるだけでfull lengthのNav1.7が発現していると考えられる。ただし、アミノ酸の入れ替わりによってその機能はかなり障害されるようです。
他の遺伝性痛覚異常疾患との関連も言われています。

2009年4月15日水曜日

p38 MAPK Activation by NGF in Primary Sensory Neurons after Inflammation Increases TRPV1 Levels and Maintains Heat Hyperalgesia

Neuron 2002 26: 57-68
半ば古典?ですが、DRGニューロンの組織学的変化が痛覚過敏をうながすことを示した初期の論文です。痛覚過敏のメカニズムとして、Central sensitization-脊髄後角(とより上位中枢)におけるプロセシングの変化とPeripheral sensitization-末梢神経における変化の2つが想定されるわけですが、そのなかのperipheral sensitizationがどのように発症するか、その機序の一つを明らかにしたものです。
カプサイシン受容体VR-1、現在はTRPV1と呼ばれていますが、このイオンチャンネルを欠失させたマウスでは痛みを伴う熱刺激の受容が減弱し、炎症に伴うthermal hyperalgesiaが生じないことが示されていました。しかしながら、どのようなシステムがTRPV1を変化させて炎症に伴うthermal hyperalgesiaを起こさせるのかはわかっていませんでした。
炎症刺激→皮膚NGF増加→知覚神経に存在するtrk-A(NGF受容体)活性化→p38MAPキナーゼのリン酸化→TRPV1の発現が増加というストーリーです。TRPV1が炎症性疼痛を惹起するメカニズムとしては蛋白リン酸化によるTRPV1の活性化を調べる論文が多かった中で、最終ゴールをTRPV1発現増加に設定してあるところがユニークです。

2009年4月6日月曜日

A Decrease in Anandamide Signaling Contributes to the Maintenance of Cutaneous Mechanical Hyperalgesia in a Model of Bone Cancer Pain

The Journal of Neuroscience, October 29, 2008, 28(44):11141-11152
内因性カンナビノイドには強い鎮痛作用がありますが、その一種アナンダミドを分解する酵素の活性が変化して痛覚過敏が生じることを示した論文です。
これまでの研究から、「痛覚過敏が発症していない状態でカンナビノイドを投与しても鎮痛効果は低く、逆にカンナビノイド受容体CB1の拮抗薬を投与すると強い痛みがおきる」ことが知られていました。このことは、内因性カンナビノイドが常にCB1受容体に働きかけて、末梢神経が過敏になりすぎることを防ぐ、ブレーキの役割を果たしていることを示唆します。
そうすると、「何らかの要因で痛覚過敏が起きるのは、内因性のカンナビノイドシステムが破綻するからじゃないの?」という仮説が設定されるわけで、今回の研究によって「少なくともbone cancer painではそのとおり」ということが証明されたわけです。
FAAHはアナンダミドを分解する酵素ですが、今回の研究で興味深いのは皮膚末梢におけるFAAHの活性がDRGにおけるそれとパラレルになっていて、おそらくは一次知覚神経に存在するFAAHが皮膚組織のアナンダミド量を決定していると考えられることです。
ちなみに、ごく最近ですが一次知覚神経におけるFAAHの発現分布について調べた論文がでましたので興味があればこちらもどうぞ。

2009年4月5日日曜日

Increased nerve growth factor after rat plantar incision contributes to guarding behavior and heat hyperalgesia.

Pain. 2005 Sep;117(1-2):68-76.
術後痛の基礎研究では大御所のDr. Brennanのラボから
炎症性疼痛では、局所組織の炎症→皮膚組織のNGFが増加→末梢神経感作→痛覚過敏
というストーリーが知られていたけど、これを術後痛モデルに当てはめた研究です。
NGFの発現量は術後痛で増加して、抗NGF抗体の投与は術後痛を軽減する(ただし効果は自発痛=guarding behavior>heat hyperalgesia>mechanical allodynia)。NGFはC線維を持つDRGニューロンを活性化させることで痛覚過敏に貢献しているらしい。
少し古い論文ですが術後痛と一次知覚神経、すわなちDRGの関係を論じたものはあまり多くないので挙げてみました。
術後痛に対するNGFの貢献が大きいことは確かだと思うのですが、同時に幾つかの疑問もあります。
例えば、いわゆる炎症性疼痛ではNGFがTRPV1の発現量の増加をさせてheat hyperalgesiaを起こすと考えられていますが、術後痛ではTRPV1の発現は増えません。これは術後痛ではNGFの発現量が炎症性疼痛モデルより低いからでしょうか?だとすると、術後疼痛のメインプレーヤーは何か他のものである可能性もあるんじゃないかとか考えてしまいます。

2009年3月30日月曜日

Mode of action of cannabinoids on nociceptive nerve endings.

Exp Brain Res. 2009 in press PMID19306092
カンナビノイド(マリファナ)の鎮痛作用に関する受容体についてのreview
マリファナについては鎮痛作用をはじめとしてさまざまな効果が期待されていて、一部の国では医用マリファナを容認するところもあります。しかしながら、イギリスで行われた臨床研究では鎮痛作用を期待してマリファナを全身投与ー吸うわけですがーさせるという「治療」については副作用が強くて実用は難しいという結論が得られています。
しかしながら、カンナビノイドを髄腔内や局所に選択的に投与するとオピオイドよりもより強力な鎮痛作用が得られることも事実であり、より効果的な選択方法を考える上で、カンナビノイドが体のどこに効いて鎮痛作用が起きているか?という疑問に答える必要性が高まっています。
カンナビノイド受容体はCB1とCB2があって、かつてはCB1は神経、CB2は免疫細胞にそれぞれ発現していると言われていましたが、詳細な発現解析が一通り終了した現在では、「両者がいろいろなところに発現している、発現量は臓器・組織によってずいぶん違う」というのが結論だとされています。神経組織の中でさえCB1受容体は広範囲な発現を示していて、どこのCB1が鎮痛に効いているのかさっぱり解らないという状態がでした。
2007年のコンディショナルノックアウトマウスを使った解析で、一次知覚神経のCB1が相当あやしいということがわかりました。僕自身、このマウスの行動解析をしましたが、はっきり言って一次知覚神経のCB1が全面的に鎮痛作用を担ってるんじゃないの?というぐらいはっきりとした表現型でした。論文の題は"Cannabinoids mediate analgesia largely via peripheral type 1 cannabinoid receptors in nociceptors"でlargelyとか言ってずいぶん控えめだなと思うかもしれませんが、これはそういう題じゃないとダメとレフェリーが言ったからであって、著者たちの思惑とは若干異なります。どうしてこんな玉虫色の表現になったのか?それは、内因性カンナビノイドがカンナビノイド受容体以外にもさまざまな受容体に作用する可能性があるからです(図)。内因性カンナビノイドの一種アナンダミドはカプサイシン受容体のアゴニストとして働いて疼痛を惹起させるとか言うグループもあって結構ややこしいのですが、このあたりのことも含めてしっかりとreviewしていて末梢神経のカンナビノイドについて整理するにはよいかもしれません。

2009年3月24日火曜日

Profiling of dynamically changed gene expression in DRG post peripheral nerve injury and a critical role of injury-induced GFAP in maintenance of pain

Pain in press
SNLラットのL5/L6 DRGを採取してマイクロアレイ。ipsi/contraでgene expressionに差を認めた遺伝子を同定した。
その中で、発現変化のタイムコースが痛覚過敏の時期に一致しそうな遺伝子をピックアップ。その中にあったGFAPに注目。
GFAPはnerve injuryでDRGで増加する、GFAP-/-マウスではSNLによる痛覚過敏が発現しないし、GFAPのアンチセンスでSNL後の痛覚過敏がリバースされる。
GFAPがどのようにして痛覚過敏に貢献しているのかはっきりしない点は不満だけど、DRGのサテライト細胞が活性化することで神経因性疼痛が生じうることを明らかにした点において興味深いです。
神経損傷における炎症細胞・グリア細胞の活性化はここ数年の流行ですが、研究の場は脊髄後角でした。この論文はそこから離れてDRGのグリア細胞を研究したわけで、今後DRGのグリア細胞がもっと注目されるといいなと思います。
S先生も以前、DRGのGFAPの発現が気になるとのコメントをしていましたが・・・あの時点で実験を始めていてもこの論文に先行を許したでしょうから、着想としてハズしていなかったと思っておいて下さい。

2009年3月23日月曜日

P2X4-receptor-mediated synthesis and release of brain-derived neurotrophic factor in microglia is dependent on calcium and p38-mitogen-activated prote

J Neurosci. 2009 29(11):3518-28
M Salterのラボから。
脊髄後角のマイクログリアから分泌されるBDNFが脊髄後角におけるシナプス伝達の抑制を抑制する(disinhibition)ことによってpain hypersensitivityが生じる、というのが最近流行の神経損傷による痛覚過敏発現の学説。マイクログリアを活性化させる因子として、ATPとその受容体(P2X4 or P2X7)が重要ということも解っていた。
今回はATPによるP2X4受容体の活性化がBDNFの合成と分泌にとって十分な刺激であることを培養マイクログリアを使って示した。似たような仕事は昨年秋にも発表されている。
気になることは2つ。
これまでのBDNFにかかわる研究といえば、DRGで合成されたBDNFが脊髄へ運搬されて、そこで知覚神経を感作させる、というストーリーだったけど、それって今はどうなんでしょうか?DRGのBDNFについてもっとも新しいと思われる文献は2005年のこれ
もうひとつ、ATPがP2X4を活性化させるのはよいとして、じゃあATPはどんな刺激で、どこから分泌されるんでしょうか??

2009年3月22日日曜日

Animal models of pain: progress and challenges

Nature Reviews Neuroscience 10, 283-294
著者のJeffrey S. Mogilはこんなのとか書いているひと。Decade of Painも終わりにさしかかり、盛んな基礎研究が臨床に生かしきれていない、という不満が高まっているのでしょうか。数年前にARDS治療薬でも同様の議論はありましたが、色々と考えさせられる問題です。
今回のreviewは基礎研究者の立場から、自分たちの使っている動物モデルを点検し、その問題点を指摘して最終的にはよりよい動物モデルを探しましょう的議論ですが、臨床サイドからのアプローチがもっとあってもよいのではないかと思います。
議論が先行したARDSを例に考えると、「ARDSは症候群であって病気ではない。複数の病態を含み得るものを単一の治療の対象としてよいのか?」という問題があります。臨床サイドの仕事としてARDSを病態で細分化すれば、失敗に終わった薬剤もまた別の結果をとるかもしれないという議論ですが、じゃあPainは?

2009年3月14日土曜日

Sensory neuron voltage-gated sodium channels as analgesic drug targets

Curr Opin Neurobiol 2008 18(4) 383-
知覚神経に特異的なNaチャンネルと痛覚に関する総説。Nociceptorに選択的に存在するチャンネルとして4種(Nav1.3, Nav1.7,Nav1.8,Nav1.9)を紹介。
Nav1.3はdevelopmentの段階で高発現するがその後減少、adult naiveDRGには発現がなくなる。でも神経損傷すると発現が増加する。KOマウスでは痛覚との関連は明らかにされていない
Nav1.7は末梢の知覚神経と交感神経および嗅球に存在する。Nav1.8の存在するニューロンで選択的にNav1.7の発現を抑えると炎症性疼痛は減弱する。神経損傷による疼痛は変化なし。幾つかのmutationと遺伝性痛覚異常症との関連が注目される
Nav1.8はNociceptorにだけ発現。Nav1.8のノックダウンは炎症性疼痛や神経損傷後の疼痛を減弱、ただしKOマウスははっきりしない
Nav1.9はNociceptorに発現。KOマウスでは、いわゆる炎症性疼痛が減弱するとともに、末梢組織で合成される発痛物質による疼痛も減弱する。神経損傷後の疼痛には関連が低そう。
Nociceptive neuronにおける活動電位の発生に、これらNav1.7-9は異なる役割を担っている。Nav1.9は静止膜電位を変化させることで活動電位の起こりやすさを調節、Nav1.7は活動電位そのものを発生させ、Nav1.8は活動電位のスパイクが繰り返される早さを調節する。
現在、Nav1.7, 1.8の選択的阻害剤が合成されつつあり動物実験では全身投与により疼痛減弱させる効果が証明されているが、ヒトに投与できる化合物の合成には至っていないようだ。

2009年3月12日木曜日

Doctor Admits Pain Studies Were Frauds, Hospital Says

Doctor Admits Pain Studies Were Frauds, Hospital Says

COX-2 inhibitorと術後痛の臨床研究の人。いろいろな論文の中で興味を引かれるのは
Anesth Analg. 2002;94(1):55-9
The preemptive analgesic effect of rofecoxib after ambulatory arthroscopic knee
surgery. Reuben SS, Bhopatkar S, Maciolek H, Joshi W, Sklar J. PMID: 11772800
pre-emptive analgesiaは正直どうなのかなと思う。

Activation of Extracellular Signal-Regulated Kinase in the Anterior Cingulate Cortex Contributes to the Induction and Expression of Affective Pain

J. Neurosci. 2009;29 3307-3321
フォルマリンテストによりpERKがACCに発現する。発現は両側性。ACCにinjectしたMEK inhibitorは痛覚過敏を抑制しないが動機づけ回避行動は抑制する。

2009年3月11日水曜日

Upregulation of IL-6, IL-8 and CCL2 gene expression after acute inflammation: Correlation to clinical pain

in press in Pain
oral surgery/inflammation model (human)でサイトカイン・ケモカインの変化をマイクロアレイとRT-PCRで定量。上昇したmoleculeの中で疼痛と関連したのはIL-6,IL-8,CCL2。NSAIDsの投与でこれらの因子の上昇は抑制されず。
ちなみに、CCL2の受容体CCR2はnaive DRG neuronには発現がない(nerve injury モデルでは上昇する: Jung H et al. Activation of the nuclear fac...[PMID: 17949992])。inflammationでは組織のCCR2は上昇するようだ(Abbadie C et al. Impaired neuropathic pain res...[PMID: 12808141])。

The Kyoto Protocol of IASP basic pain terminology

Pain 137 (2008) 473–477
Nociceptionとは一体なに?Painとは?IASPが定義してくれてます。今回のreviewは昔のバージョンの改訂版なのですが、Nociceptionの定義に関してDr. Dubnerが強い姿勢で反論を示していて、いろいろなディスカッションがなされています。まぁ確かに。
この題は京都議定書 (Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change)をもじったみたいです。本当に京都でディスカッションしたみたいですけど。