2009年3月30日月曜日

Mode of action of cannabinoids on nociceptive nerve endings.

Exp Brain Res. 2009 in press PMID19306092
カンナビノイド(マリファナ)の鎮痛作用に関する受容体についてのreview
マリファナについては鎮痛作用をはじめとしてさまざまな効果が期待されていて、一部の国では医用マリファナを容認するところもあります。しかしながら、イギリスで行われた臨床研究では鎮痛作用を期待してマリファナを全身投与ー吸うわけですがーさせるという「治療」については副作用が強くて実用は難しいという結論が得られています。
しかしながら、カンナビノイドを髄腔内や局所に選択的に投与するとオピオイドよりもより強力な鎮痛作用が得られることも事実であり、より効果的な選択方法を考える上で、カンナビノイドが体のどこに効いて鎮痛作用が起きているか?という疑問に答える必要性が高まっています。
カンナビノイド受容体はCB1とCB2があって、かつてはCB1は神経、CB2は免疫細胞にそれぞれ発現していると言われていましたが、詳細な発現解析が一通り終了した現在では、「両者がいろいろなところに発現している、発現量は臓器・組織によってずいぶん違う」というのが結論だとされています。神経組織の中でさえCB1受容体は広範囲な発現を示していて、どこのCB1が鎮痛に効いているのかさっぱり解らないという状態がでした。
2007年のコンディショナルノックアウトマウスを使った解析で、一次知覚神経のCB1が相当あやしいということがわかりました。僕自身、このマウスの行動解析をしましたが、はっきり言って一次知覚神経のCB1が全面的に鎮痛作用を担ってるんじゃないの?というぐらいはっきりとした表現型でした。論文の題は"Cannabinoids mediate analgesia largely via peripheral type 1 cannabinoid receptors in nociceptors"でlargelyとか言ってずいぶん控えめだなと思うかもしれませんが、これはそういう題じゃないとダメとレフェリーが言ったからであって、著者たちの思惑とは若干異なります。どうしてこんな玉虫色の表現になったのか?それは、内因性カンナビノイドがカンナビノイド受容体以外にもさまざまな受容体に作用する可能性があるからです(図)。内因性カンナビノイドの一種アナンダミドはカプサイシン受容体のアゴニストとして働いて疼痛を惹起させるとか言うグループもあって結構ややこしいのですが、このあたりのことも含めてしっかりとreviewしていて末梢神経のカンナビノイドについて整理するにはよいかもしれません。

2009年3月24日火曜日

Profiling of dynamically changed gene expression in DRG post peripheral nerve injury and a critical role of injury-induced GFAP in maintenance of pain

Pain in press
SNLラットのL5/L6 DRGを採取してマイクロアレイ。ipsi/contraでgene expressionに差を認めた遺伝子を同定した。
その中で、発現変化のタイムコースが痛覚過敏の時期に一致しそうな遺伝子をピックアップ。その中にあったGFAPに注目。
GFAPはnerve injuryでDRGで増加する、GFAP-/-マウスではSNLによる痛覚過敏が発現しないし、GFAPのアンチセンスでSNL後の痛覚過敏がリバースされる。
GFAPがどのようにして痛覚過敏に貢献しているのかはっきりしない点は不満だけど、DRGのサテライト細胞が活性化することで神経因性疼痛が生じうることを明らかにした点において興味深いです。
神経損傷における炎症細胞・グリア細胞の活性化はここ数年の流行ですが、研究の場は脊髄後角でした。この論文はそこから離れてDRGのグリア細胞を研究したわけで、今後DRGのグリア細胞がもっと注目されるといいなと思います。
S先生も以前、DRGのGFAPの発現が気になるとのコメントをしていましたが・・・あの時点で実験を始めていてもこの論文に先行を許したでしょうから、着想としてハズしていなかったと思っておいて下さい。

2009年3月23日月曜日

P2X4-receptor-mediated synthesis and release of brain-derived neurotrophic factor in microglia is dependent on calcium and p38-mitogen-activated prote

J Neurosci. 2009 29(11):3518-28
M Salterのラボから。
脊髄後角のマイクログリアから分泌されるBDNFが脊髄後角におけるシナプス伝達の抑制を抑制する(disinhibition)ことによってpain hypersensitivityが生じる、というのが最近流行の神経損傷による痛覚過敏発現の学説。マイクログリアを活性化させる因子として、ATPとその受容体(P2X4 or P2X7)が重要ということも解っていた。
今回はATPによるP2X4受容体の活性化がBDNFの合成と分泌にとって十分な刺激であることを培養マイクログリアを使って示した。似たような仕事は昨年秋にも発表されている。
気になることは2つ。
これまでのBDNFにかかわる研究といえば、DRGで合成されたBDNFが脊髄へ運搬されて、そこで知覚神経を感作させる、というストーリーだったけど、それって今はどうなんでしょうか?DRGのBDNFについてもっとも新しいと思われる文献は2005年のこれ
もうひとつ、ATPがP2X4を活性化させるのはよいとして、じゃあATPはどんな刺激で、どこから分泌されるんでしょうか??

2009年3月22日日曜日

Animal models of pain: progress and challenges

Nature Reviews Neuroscience 10, 283-294
著者のJeffrey S. Mogilはこんなのとか書いているひと。Decade of Painも終わりにさしかかり、盛んな基礎研究が臨床に生かしきれていない、という不満が高まっているのでしょうか。数年前にARDS治療薬でも同様の議論はありましたが、色々と考えさせられる問題です。
今回のreviewは基礎研究者の立場から、自分たちの使っている動物モデルを点検し、その問題点を指摘して最終的にはよりよい動物モデルを探しましょう的議論ですが、臨床サイドからのアプローチがもっとあってもよいのではないかと思います。
議論が先行したARDSを例に考えると、「ARDSは症候群であって病気ではない。複数の病態を含み得るものを単一の治療の対象としてよいのか?」という問題があります。臨床サイドの仕事としてARDSを病態で細分化すれば、失敗に終わった薬剤もまた別の結果をとるかもしれないという議論ですが、じゃあPainは?

2009年3月14日土曜日

Sensory neuron voltage-gated sodium channels as analgesic drug targets

Curr Opin Neurobiol 2008 18(4) 383-
知覚神経に特異的なNaチャンネルと痛覚に関する総説。Nociceptorに選択的に存在するチャンネルとして4種(Nav1.3, Nav1.7,Nav1.8,Nav1.9)を紹介。
Nav1.3はdevelopmentの段階で高発現するがその後減少、adult naiveDRGには発現がなくなる。でも神経損傷すると発現が増加する。KOマウスでは痛覚との関連は明らかにされていない
Nav1.7は末梢の知覚神経と交感神経および嗅球に存在する。Nav1.8の存在するニューロンで選択的にNav1.7の発現を抑えると炎症性疼痛は減弱する。神経損傷による疼痛は変化なし。幾つかのmutationと遺伝性痛覚異常症との関連が注目される
Nav1.8はNociceptorにだけ発現。Nav1.8のノックダウンは炎症性疼痛や神経損傷後の疼痛を減弱、ただしKOマウスははっきりしない
Nav1.9はNociceptorに発現。KOマウスでは、いわゆる炎症性疼痛が減弱するとともに、末梢組織で合成される発痛物質による疼痛も減弱する。神経損傷後の疼痛には関連が低そう。
Nociceptive neuronにおける活動電位の発生に、これらNav1.7-9は異なる役割を担っている。Nav1.9は静止膜電位を変化させることで活動電位の起こりやすさを調節、Nav1.7は活動電位そのものを発生させ、Nav1.8は活動電位のスパイクが繰り返される早さを調節する。
現在、Nav1.7, 1.8の選択的阻害剤が合成されつつあり動物実験では全身投与により疼痛減弱させる効果が証明されているが、ヒトに投与できる化合物の合成には至っていないようだ。

2009年3月12日木曜日

Doctor Admits Pain Studies Were Frauds, Hospital Says

Doctor Admits Pain Studies Were Frauds, Hospital Says

COX-2 inhibitorと術後痛の臨床研究の人。いろいろな論文の中で興味を引かれるのは
Anesth Analg. 2002;94(1):55-9
The preemptive analgesic effect of rofecoxib after ambulatory arthroscopic knee
surgery. Reuben SS, Bhopatkar S, Maciolek H, Joshi W, Sklar J. PMID: 11772800
pre-emptive analgesiaは正直どうなのかなと思う。

Activation of Extracellular Signal-Regulated Kinase in the Anterior Cingulate Cortex Contributes to the Induction and Expression of Affective Pain

J. Neurosci. 2009;29 3307-3321
フォルマリンテストによりpERKがACCに発現する。発現は両側性。ACCにinjectしたMEK inhibitorは痛覚過敏を抑制しないが動機づけ回避行動は抑制する。

2009年3月11日水曜日

Upregulation of IL-6, IL-8 and CCL2 gene expression after acute inflammation: Correlation to clinical pain

in press in Pain
oral surgery/inflammation model (human)でサイトカイン・ケモカインの変化をマイクロアレイとRT-PCRで定量。上昇したmoleculeの中で疼痛と関連したのはIL-6,IL-8,CCL2。NSAIDsの投与でこれらの因子の上昇は抑制されず。
ちなみに、CCL2の受容体CCR2はnaive DRG neuronには発現がない(nerve injury モデルでは上昇する: Jung H et al. Activation of the nuclear fac...[PMID: 17949992])。inflammationでは組織のCCR2は上昇するようだ(Abbadie C et al. Impaired neuropathic pain res...[PMID: 12808141])。

The Kyoto Protocol of IASP basic pain terminology

Pain 137 (2008) 473–477
Nociceptionとは一体なに?Painとは?IASPが定義してくれてます。今回のreviewは昔のバージョンの改訂版なのですが、Nociceptionの定義に関してDr. Dubnerが強い姿勢で反論を示していて、いろいろなディスカッションがなされています。まぁ確かに。
この題は京都議定書 (Kyoto Protocol to the United Nations Framework Convention on Climate Change)をもじったみたいです。本当に京都でディスカッションしたみたいですけど。