2009年5月14日木曜日

General anesthetics activate a nociceptive ion channel to enhance pain and inflammation

Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 June 24; 105(25): 8784–8789.
揮発性麻酔薬には気道過敏性があったり、静脈麻酔薬プロポフォールには血管痛があったりして麻酔科医は困っているのですが、これらの作用が薬剤が一次知覚神経に作用するものであること、そのメカニズムとしてTRPチャンネルの一つTRPA1を介するものであることを示した論文です。2.9MACのイソフルランによってTRPA1を介して電流が流れていることがわかります。2.9MACはちょっと高濃度ですが、培養DRGニューロンでも同じような電流が記録されています。TRPA1ノックアウトマウスにプロポフォールを投与して脳波を測定すると、野生型でみられた注入時の脳波変化が認められないので、プロポフォールもTRPA1を活性化させて注入時の血管痛をおこすのではないかと著者らは考えているようです。この論文ではイソフルランとTRPA1との関係に焦点を当てていますが、実はTRPV1もイソフルランによって影響を受ける、すわなちイソフルラン投与環境ではカプサイシンやプロトン、熱に対する反応性が増強する効果があることを示した論文を同じグループが発表しています。こちらの論文はイソフルランの濃度を振って用量依存性も示しています。1MACあたりから効果がでるようです。
揮発性麻酔薬や静脈麻酔薬に鎮静効果があっても鎮痛効果がないことは麻酔科医であれば誰でも知っていることだと思いますが、これらの論文の結果を考えると、全身麻酔薬は「眠くなるけど実は普段よりも痛い」状態を作り出しているのかもしれません。それから、全身麻酔中には体温は必ず下がりますが、TRPV1アゴニストのカプサイシンでも体温は下がります。そう考えると、「イソフルランはTRPV1の作用を増強して麻酔中の体温を低下させるのだ」という作業仮説が成り立ったりして興味深いです。
ちなみにTRPA1は催涙ガスやワサビ、ホルマリンによって開口します。ワサビのあのツンとくる感じでTRPA1の作用を実感したらよいのでしょうか。

2009年10月5日
訂正です。プロポフォール投与時に測定しているのは脳波ではなくて筋電図のようです。

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