2009年6月19日金曜日

Local Translation in Primary Afferent Fibers Regulates Nociception

Plos one 2008, 3, (4) e1961
mTORというのはmammalian target of rapamycinの略で、mRNAからタンパクが作られる過程、いわゆるtranslationを制御する物質なのだそうです。
タンパク合成というのは細胞体で行われるもの、というのが一般的理解ですが、実はそうでもない、というケースも数多く報告されています。神経細胞でいうならばシナプス近傍でもタンパク合成が行われていて、そのようなタンパク合成が神経の活動性、代表的には海馬におけるLTPですが、そういったものに影響を与えているということはまずまず知られています。細胞体以外でのタンパク合成に重要なのがmTORで、この論文は一次知覚神経、それもシナプス側ではなくて、皮膚組織側にmTORが発現していて、痛覚過敏に何らかの貢献をしている、という論文です。
末梢神経にmTORが存在していることを皮膚組織の免疫染色で示しています・・・とても綺麗です。神経のマーカーにはPGPとNF200を使っていますが、多くのmTOR陽性線維はNF200陽性、すなわち有髄繊維であるようです。
mTORはラパマイシンという抗生物質で機能が阻害されるからmTORという名前なのですが、実際にラパマイシンを足底に投与して、痛覚過敏が減弱するかを検証しています。結果として、カプサイシン投与後のsecondery hyperalgesiaを抑制して機械刺激に対する過敏性を減弱させるようです。この反応は、中枢性感作(脊髄レベルの可塑性)によって生じると考えられていたのですが、一次知覚神経の、それもDRGよりももっと末梢側におけるタンパク発現の変化が病態に関与していると示されたことには驚きました。

2009年6月6日土曜日

Distinct subsets of unmyelinated primary sensory fibers mediate behavioral responses to noxious thermal and mechanical stimuli

PNAS 2009 Jun 2;106(22):9075-9080.
C-fiber neuronがIB4の発現の有無で二つのグループに分かれるのは周知のことと思います。マウスではIB4に分布がきわめて近いMrgprdというタンパクがあって、AndersonのグループはMrgprdトランスジェニックマウスを使って、投射先である皮膚組織の領域(深さ)がMrgprd+とMrgprd-で異なることなどを示してきました。ちなみに、マウスではTRPV1陽性ニューロンはほとんどすべてIB4-なニューロンと重なるので、マウスC-fiberはMrgprd+かTRPV1+かに分けることができるわけです。この論文はMrgprd遺伝子の前にジフテリア毒素受容体遺伝子をくっつけたマウスを作り、これにジフテリア毒素を投与することでMrgprd+ニューロンを選択的に除去したときに痛覚受容がどうなるかを見たものです。ジフテリア毒素を投与されたマウスではIB4の発現がほぼ消失しています。この条件下で熱と機械刺激に対する反応を見てみると、熱刺激への反応は正常なのに、機械刺激に対する閾値は著しく上昇します。逆に、カプサイシンでTRPV1+すわなちMrgprd-ニューロンを除去すると全く逆の反応、つまり、機械刺激には正常に反応し、熱刺激への感受性が失われることがわかりました。
このような行動解析の結果は、電気生理学的にはpolymodal、すなわち、いろんな刺激に反応するC-fiberニューロンが、実は機械刺激を伝達するグループと熱刺激を伝達するグループの二つに分けることができうる、ということを示します・・・。
ところで、同じような手法でNav1.8陽性ニューロンを除去したらどうなるのか?ということを調べた論文があります。マウスNav1.8はmRNAレベルではC-fiber neuronの大部分に発現しているので、このトランスジェニックマウスでは、すべてのIB4+ニューロンと(おそらくは)ほとんどすべてのTRPV1+ニューロンが消失します。当然、熱刺激への感受性も機械刺激への感受性も低下すると思いきや、行動解析の結果では、両者とも野生型とほとんどかわりはありません・・。
いったいどうなっているのでしょうか?
追記:Nav1.8アブレーションマウスでは、von Freyの値は野生型とトランスジェニックでほぼ同じですが、より強い機械的刺激に対する反応はアブレーションマウスで減弱しているようです。