2009年7月10日金曜日

Differential contribution of SNARE-dependent exocytosis to inflammatory potentiation of TRPV1 in nociceptors.

FASEB J. 2009 Jul 7. [Epub ahead of print]
炎症性疼痛、とくに熱に対する痛覚過敏にTRPV1の活性化が関与していることは広く知られた事実です。それで、プロスタグランディンやブラジキニンがどうやってTRPV1を活性化させるか?ということについては、細胞内のPKCやPKAが関与しているというような話題に始まり、現在ではTRPV1の細胞内分布の変化「TRPV1は普段は細胞質に分布しているけど、活性化されると細胞膜に発現する」という現象に注目が集まっています。
この論文はこれまでTRPV1を活性化させると言われてきた様々な物質:NGF, IGF-I, ATP, BK, IL-1, arteminをDRG細胞に作用させたときにTRPV1の細胞内発現がどう変わるかを調べています。NGF、IGF-1、ATPを用いるとTRPV1の膜表面への発現が増加しますが、BK、IL-1、arteminでは変化しません。カルシウムイメージングでみると、これらすべての物質がTRPV1を活性化させますが、TRPV1を膜表面に発現させる役割を持つSNAREタンパクの阻害剤が有効なのはNGF、IGF-1、ATPによる活性化の場合だけであることがわかりました。
注目するべきはボツリヌストキシンA(ボトックス)との関係でしょうか。ボツリヌストキシンは痙性斜頸とか顔面痙攣など筋肉への作用が期待されて臨床応用が始まりましたが、頭痛などへの応用も考えらているようです。
いったいどうしてボツリヌストキシンが痛みに効くのか?というところですが、ボツリヌストキシンはSNAREタンパクを強力に阻害する作用があり、SNAREを利用して細胞内小胞体からシナプスへとアセチルコリンを放出する機構をブロックすることで筋弛緩作用が生まれる、ようです(参考)。ボツリヌストキシンがカプサイシンによる神経感作をブロックするというヒトのデーターもあって、臨床的にも両者の関係は注目されているのですが、膜タンパクであるイオンチャネルTRPV1と神経伝達物質アセチルコリンが同じシステムで細胞内移動を行っていて、ボツリヌストキシンの鎮痛作用にこんな作用機序があるというのは興味深いです。
この論文によると、TRPV1感作物質にはSNARE dependentのものとSNARE independentなものの二つがあるということになります。炎症部位にはTRPV1感作物質がごちゃまぜに、大量に存在するのでしょうから、臨床的にボツリヌストキシンで100%TRPV1の感作をブロックするというのはなかなか難しい話だ、ということでしょうか。

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