2009年12月23日水曜日

Bupivacaine Inhibits Glutamatergic Transmission in Spinal Dorsal Horn Neurons

Anesthesiology 2010; 112:138 – 43

臨床で使われる薬剤にはdirty drug(wiki)が多いとか言います。Dirty Drugというのは生体にいろんな作用点(受容体やイオンチャネルなど)を持っていて、単一の受容体だけではその作用機序を説明できないような薬剤のことです。

単一の受容体に着目し、その受容体に対する親和性と選択性を高めることによって予想外の副作用を抑えるというのが創薬の基本パターンだと思うのですが、最近はいろんな作用点を持った薬剤こそが臨床使用に耐えうるのではないか?というような見方をする人も増えているようです。

この論文は局所麻酔薬であるブピバカインがナトリウムチャネルではなくてNMDA受容体を阻害する機能を持っていることを脊髄レベルで報告したものです。

図1でブピバカインがexogenousに投与したNMDAによる内向き電流(NMDAカレント)を阻害することが示されいます。この作用は用量依存性があるようです。

図2ではTTXおよびLaCl3を同時投与することでTTX-rな電位依存型ナトリウムチャネルと電位依存型カルシウムチャネルの関与を見ています。TTXもLaCl3も単独ではNMDAカレントを阻害せず、ブピバカインと同時投与してもブピバカインの作用に影響を与えないことが示されています。

図3では異なるpH環境下でNMDA阻害作用がどう変化するかを検討しています。局所麻酔薬がナトリウムチャネルをブロックする場合、その作用はpHに依存しますが、NMDAカレントの場合は影響しないようです。メカニズムが違うのでしょうか。

図4ではGタンパク阻害剤GDP-beta-Sを投与してGタンパクの関与を調べていますが、この薬剤も影響を与えないようです。

図5ではブピバカイン以外の局所麻酔薬、リドカイン、ロピバカイン、メピバカインがNMDAカレントを阻害することが示されています。

そんなわけで、局所麻酔薬がほぼ間違いなく直接にNMDA電流をブロックすることが脊髄ニューロンで証明されました。NMDAを阻害するにはナトリウムチャネルよりもおよそ1000倍高濃度のブピバカインが必要なのだそうですが、それでも脊髄麻酔のときや硬膜外麻酔の時に除痛が得られている状態にはNMDAのブロッキング作用も関与しているようです。

ナトリウムチャネルのサブタイプ別の鎮痛薬の開発が注目されています。局所麻酔薬による強力な鎮痛作用に知覚神経選択性を付加することでさらに良質な薬剤を作るのがその狙いなのですが、臨床的な局所麻酔薬の使い心地をナトリウムチャネルの阻害作用だけに求めすぎると意外な落とし穴があるのかもしれません。

そんなわけでF先生K先生おめでとうございました。


0 件のコメント: