2010年2月25日木曜日

Opioids activate brain analgesic circuits through cytochrome P450/epoxygenase signaling.

Nat Neurosci. 2010 Mar;13(3):284-6. Epub 2010 Feb 7.
Mu-オピオイド受容体が鎮痛に働く機序として、中心灰白質(PAG)ニューロンが賦活化されること、これはPAGニューロンに対する抑制性GABA入力が抑制されることで生じること、GABA入力が抑制されるメカニズムには電位依存性カリウムチャネルが関与していること、Mu-オピオイド受容体がカリウムチャネルを抑制するにはホスホリパーゼA2の活性化を介した細胞内アラキドン酸増加が必要であること(ref)が知られています。アラキドン酸カスケードの中でもシクロオキシゲナーゼ(COX)の下流であるプロスタグランディンはオピオイド作用に関与せず、COX阻害剤はプロスタグランディン以外の(そしてオピオイドの作用に関連するであろう)カスケードを相対的に活性化させるため、COX阻害剤とオピオイドには相乗効果が生まれるのだと考えられています。
それでは、オピオイドの作用に関連するアラキドン酸カスケードはいったい何か?ということですが、これまで12-リポキシゲナーゼ(LOX)の関与が主張されてきました。
今回は12-LOXとは違う、新しいカスケードが関与しているという報告です。アラキドン酸カスケードにはCOX/LOX以外にP450を介したエポキシゲナーゼ系というものが存在するそうです。著者らはP450酵素をニューロンでだけノックアウトしたマウスを使ってオピオイドの効果を判定しました。
図1でP450が消失していることを示しています。図2ではモルヒネ投与による急性の鎮痛効果がKOマウスでは減弱していることを行動解析で示しています。図3では薬物によるP450/エポキシゲナーゼのブロックでも同様にモルヒネの作用が減弱することが示されています。
アラキドン酸カスケードは調べれば調べるほどどんどん枝分かれしていって、どの枝がどれくらい重要かさっぱりわからなくなるような気がするのですが、P450も実際には多様な酵素群の集合体で、合成される化合物も多彩です(ref)。今回の論文で使われたトランスジェニックマウスは、すべてのP450酵素群が働くなるようにしてあるようです。今後もっと詳細な解析がなされれば、12-LOX系との関連や整合性も明らかになるのかもしれません。

2010年2月15日月曜日

痛みと鎮痛の基礎知識 上・下(知りたい!サイエンス)技術評論社

滋賀医大の小山先生がついに本を書かれました。小山先生のホームページはこのブログの読者ならば一度はお世話になったことがあるのではないでしょうか。実は僕もその一人で、この本はそこに貼ってあるのを見つけて購入しました。今アマゾンで注文したら24時間で届きますよ。
痛覚および疼痛治療について丁寧に記述されています。上巻は基礎研究、下巻は臨床と分野を区別していますが、両者には一貫性があります。僕は通読しましたが、おかげさまで痛覚に関する考え方を整理しなおすことができました。一番最初の章に痛覚という概念を理解する歴史的な過程が書かれており、個人的にはもっとも読み応えがありました。是非ご一読ください。

2010年2月12日金曜日

ERK1/2 Mitogen-Activated Protein Kinase Phosphorylates Sodium Channel Nav1.7 and Alters Its Gating Properties.

J Neurosci. 2010 Feb 3;30(5):1637-47.
Nav1.7
が一次知覚神経に存在し痛覚伝達にはたらいていること、鎮痛薬のターゲットになりうることはこのブログでも何度か紹介した通りです。今回の論文はpERKNav1.7をリン酸化することでその機能を活性化させているということを報告しています。似たようなストーリーはNav1.8p38でも報告されています。

1ではtotal ERKNav1.7DRGsmall sized neuronに存在することが示されていて両者が細胞内でinteractionできることを示唆しています。

2ではNGF/GDNFを培養DRGに投与してERKのリン酸化をみています。pERKは両者で増加しています。

3ではERKリン酸化阻害剤U0124DRGニューロン-NGFの系で機能することを示しています。

4ではU0124DRGニューロンの活動電位を抑制させることをしめしています。

5ではHEK細胞に発現させたNav1.7の電流がU0124によって抑制されることが示されます。

6から図8Nav1.7リン酸化部位の検索です。一連の解析から、Nav1.7の第一ループにリン酸化部位があること、同定された4箇所のリン酸化部位のなかでNav1.7の機能変化に関与している部位は3箇所あることなどなどが明らかにされています。

DRGにおけるERKのリン酸化というと、SNLモデルのL5がもっとも強くて持続的な発現が認められるケースでしょうか。TNFで誘導されるという報告もありますし、activitiy dependentにERKが誘導されるという報告もあります。いずれにせよ、強い刺激によって一過性にpERKが発現してNav1.7をリン酸化する、と考えるとその役割というか重要性がなんとなく理解できるような気もします。