2010年4月21日水曜日

Resolvins RvE1 and RvD1 attenuate inflammatory pain via central and peripheral actions

Nat Med. 2010 Apr 11. [Epub ahead of print]
Resolvinというのは、ω3不飽和脂肪酸から抽出された抗炎症作用を持つ脂質です。EPA由来のものをResolvinE1 (RvE1)、DHA由来のものをResolvinD1 (RvD1)と呼んでいます。非常に強い抗炎症作用があることは知られていましたが、この論文では炎症性疼痛に対する鎮痛作用をみています。
まずRvE1を足底に投与してホルマリン試験を行っています。ホルマリン試験における第II相がオピオイドやCOX2阻害剤と同程度に抑制されることが示されています。この作用はナロキソンで拮抗されず、PTXでリバースされているのでオピオイド受容体以外のGPCRが関与していると考えられます。実際に、ChemR23というResolvinの受容体がDRGと脊髄に存在することが形態学的に証明されています(図1)
図2では炎症性疼痛モデルといわれるCFA/カラゲニンの二つのモデルへの鎮痛効果が検証されています。RVE1やRVD1は髄腔内投与しても、足底投与しても鎮痛効果を発揮するようです。このうち、足底投与による鎮痛作用の少なくとも一部は炎症を軽減することによることが示されています。
知覚神経への影響ですが、TNFalphaやカプサイシンの髄腔内投与による痛覚過敏を抑制する効果があること、DRGおよび脊髄後角のERK発現を抑制すること、後角ニューロンのEPSCの頻度を増加させ、NMDA電流の大きさを小さくすることなどから(脊髄から見て)presynaptic, postsynapticの両方に働くと結論づけています(図3,4)。
一つの図で普通の論文が一個書けるような濃密な論文で、Ru-Rongらしいできあがりです。

2010年4月11日日曜日

Epigenetic gene silencing underlies C-fiber dysfunctions in neuropathic pain.

J Neuroscience 2010 30: 4806-14
NRSF/RESTは抑制性の転写因子で、非神経細胞においてさまざまなneuronal geneの発現を抑える役割を持っています。最近では神経細胞においてもなんらかの役割を持っていて、特に神経の病的変性に伴う遺伝子発現の変化との関連が注目されているようです。
この論文は末梢神経を損傷させたときの遺伝子発現の変化にNRSFがどのように関与するかを調査したものです。
図1ではaxotomyで発現レベルが低下する代表的な遺伝子、MORとNav1.8のプロモーター領域にNRSFを認識するモチーフ(NRSE)があることを示しています。NRSFの発現量は神経損傷によって増加しています(図2)。NRSFが遺伝子発現を抑制するときにはヒストンの脱アセチル化が必要ですが、Nav1.8、MORの両者において脱アセチル化が生じていることが示されています(図3)。NRSFをノックダウンするとMORやNav1.8を含む種々の遺伝子発現の低下が抑制され(図4)、C-fiber刺激の反応閾値の低下も抑制されています(図5)。神経損傷後に観察されるモルヒネへの感受性の低下もNRSFのノックダウンによって抑制されます。
これまで、神経損傷に伴って遺伝子発現が低下することについてはいろいろと調べられて来ましたが、今回の論文は全く新しい切り口でこのメカニズムを理解しようとするものだと思います。従来の考え方である「末梢組織由来の神経栄養因子の輸送が途絶する」現象との関連性などはどのようになっているのでしょうか。
蛇足ですが、僕もDRGのwhole cell レベルでヒストンのアセチル化の程度を調べたことがありました。結局、wholeではあまり変化がなくて、やはりこの論文のようにChipアッセイをしないとその差はdetectできないのでしょう。